毎回書いているが、「から騒ぎ」はお気に入りの一本で、
ブログのタイトルもベネディクトの台詞から取っているくらいで
ある。
今回の公演でもさらっと言われていたので、それほど重要な台
詞ではないようだけれど。
イギリスで見たので当然ながら全編イギリス英語。
シェイクスピア劇を見たのは実に半年ぶりだったことと、
英語だったことで初めはなかなか感覚を取り戻せなくて
困った。
今回思ったのは、ベアトリスはベネディクトのことが好きで、
普段憎まれ口を叩くのはその照れ隠しか、
はたまた彼女流の愛情表現なのではないかということだ。
以前
ペンブルックプレイヤーズのものを見たときは
ベネディクトはベアトリスのことが元から好きだと感じた
のだが、今回はそちらの方は感じなかった。
読んだのが数年前なのでもはや内容は忘れてしまったが、
ジラール『
羨望の炎―シェイクスピアと欲望の劇場
』に書いてあった
「ベネディクトとベアトリスの二人は相手のことが好きだと
認識しているが、告白する側と告白される側の
パワーバランスの不均衡を知っているので、告白することが
できない」
というような記述が未だに心に残っている。
eavesdroppingのシーンでは小道具として洗濯物が
使われていた。
ベネディクトは洗濯物の後ろに隠れ、洗濯物の上から
顔を出したり、2枚の洗濯物の間から覗き込んでみたり。
どういうわけかベアトリスの下着が干してあって、
それをうっかり手に持っていたところをベアトリスに
見つかって（夕食ができたと呼びに来る場面）
思いっきり不審な目で見られるという仕掛けも。
ベアトリスの場面も隠れるのは洗濯物だが、
途中から洗濯かごに隠れてしまい、表情が見えないのが
残念だった。
個人的には、「立ち聞き」のシーンは周囲の発言に
一喜一憂するベネディクトとベアトリスの表情を見るのも
楽しみのひとつだと思う。
演出として面白いと思ったのは、最初の方でベネディクトが
ドン・ペドロにベアトリスの愚痴を言う場面で、ベネディクトが
ひとくさり喋った後椅子に座るが、すぐに思い出したように
続きを言うところだ。
原作をチェックしていないで分からないが（そもそも英語が
よく聞き取れなくてどこだったか分からない）、おそらく原
作ではベネディクトの長台詞になっていて、
観客を飽きさせないために動作を入れたのではないだろうか。
ほか、疑問に思ったのは、神父（司祭？）は何者なのか、
どうして神父があのような策略を思いつけるのか
ということだ。
『
ロミオとジュリエット
』でも入れ知恵をするのは
ロレンス神父だし、「神父/司祭＝智恵を授ける者」と
いうイメージが当時はあったのだろうか。
数百年前の日本に置き換えるとすると、お坊さんが
困っている人に智恵を授けるというイメージはよく合うと思う。
機智合戦を繰り広げる知性的なベアトリスやベネディクトが
妙案を思いついてもいいと思うのだが、このような策は
当事者でない冷静な目から生み出される方がよいのかもしれない。
神父は、クローディオが「いいえ」と言ったあたりでは
所在なさそうにしていたが、ヒーローが昏倒したところでは
ずいぶんと落ち着いていると感じられた。
教会では精神的理由で倒れる人が多くてこういう状況には
慣れていたのだろうか？
同行者によると、衣装は18世紀風だったとのことだ。
ドン・ペドロやクローディオは赤い連隊服、女性陣は皆長いドレス。
前に見たときも赤い制服だったから、衣装の時代には全然頭が回らなかった。
警吏たちはRを巻き舌地味に発音していた。
方言なのかもしれないが、むしろ古い英語の発音を想起してしまった。
ラストでベネディクトがドン・ペドロに「結婚したらどうですか」と言うと
侍女のひとりがペドロに駆け寄って手を取った。
同行者は「ラストの約束事のパロディとしての演出」と解釈していた。
なんとなく
尺には尺をを思い出した。
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