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ウーマン・イン・ホワイト

「ウーマン・イン・ホワイト」 @青山劇場


青山でミュージカル「ウーマン・イン・ホワイト」を観てきた。

これは原作が19世紀の小説なのだが、原作は岩波文庫で3冊もあるので、全く読む気がしない。
英語で読んだら気が遠くなりそう)


ブロードウェイ・ミュージカルというとRENTを想像していたが、むしろ宝塚に近い印象を持った。

RENTはロックでガンガン押していくが、WIWはもっとしっとりしている。


演劇中心に見ている身としては、冒頭の台詞「誰かいますか~♪」から歌なのは最初の場ぐらいは馴染めなかった。


青山劇場は少し古い感じがしたけれど、千鳥配置になっていて見やすかった。

ちなみに一番後ろの席だった。

2階席の前2~3列がほとんど客がいなかったが、B席は全日完売のはずなので、A席だったのだろう。

休憩のときに前に移動しちゃえばよかったかなあ。。。
(アフタートークのときは前に行った)


なんといっても主役のマリアン(笹本玲奈)が際立っていた。

出番もすごく多いし、「オール・フォー・ローラ」など曲もかっこいい。

プログラムに「声質を5種類ほど使い分ける」と書いてあったが、2種類しか分からなかった。

妹ローラを守ると決意した強い声と、フォスコ伯爵を誘惑するときの女性らしい声(宝塚の娘役に近い)。

意識していなかったから分からないけれど、ウォルターが来たばかりの頃はまた違う声だったのかも。

彼女は2年ほど前、ベガーズ・オペラで見たから演技がうまいのは知っていたものの、役柄がウブな少女だったので、若さで押しているだけなのかとも思っていた。
(なお、そのとき共演した内野聖陽がプログラムに「当時は僕のsweet heart」とコメントを送っている。彼は主役マクヒースをやった)

笹本玲奈は13歳のときからピーター・パンに主演したりして、実力派女優なんだそうだ。

もし彼女がローラをやった場合(年齢的に)、マリアンに相当強い人を持ってこないと食われそうだ。


マリアンは父親違いの妹ローラをいたくかわいがっているが、Jane Austenの『分別と多感』だと「half brotherはほとんど他人」という言い方をされている。

当時としてはどちらの考えが主流だったのだろう?

親が再婚するのはよくある話なのか分からないが、18世紀の戯曲GoldsmithのShe Stoops to Conquer
と前述のAustenの『多感と偏見』には出てきた。


原作を読めば分かるのだろうが、マリアンの年齢が気になった。

20代の笹本玲奈本人より年齢が上の役ということだと、30代ということになるが(叔父のことを「もうすぐ死にそうといい続けて30年」と言っているので30より上ということか?)、オースティンの小説の世界だと30代はオールドミスである。
(『高慢と偏見』のシャーロットは29ぐらいだったような)

マリアンが30代となると、若い(おそらく20代の)ウォルターと結ばれるのは身分以前に年齢でありえないことになってしまうが、そのあたりはどうだったのだろう。


画家のウォルターは最初の方に名前があるから、主人公の一人なのかと思ったが(実際そうなんだろうけど)、思ったより出番が少なかった。

前半の前半と後半の後半じゃないかな。(つまり約半分)

出番はパーシヴァル卿の方が多いかもしれない。

印象(インパクト)はフォスコ伯爵が一人勝ち。

ところで、貧乏画家のウォルターの階級はどこに入るのだろう?

使用人ぽいからLowか?


ローラは高音がちょっと物足りなかったが、そんなにひどいとは感じなかった。

アン(彼女がウーマン・イン・ホワイト)とはメイクだけでなく、素の状態でもよく似ていて、他人の空似とはこういうものを言うのか。

唄はアンのほうがうまかった。

アンの方は宝塚の出身で、白洲二郎で代役として白洲正子をやっていたそうだから、見てはいるはずなのだけど・・・宝塚だとみんな似た感じだからよく覚えていない。

たぶん宝塚のときとは声の出し方が違っているんじゃないかと思う。

余談だが、アン役の人がインタビューで言っている「音程の狂った曲は新人公演以来」というのはジュリアス・シーザーが原作のロック・オペラ「暁のローマ」で、ポーシャ(ポルキア)が狂って「手を洗っても血の染みが落ちない」と歌う唄ではないかと思う。


パーシヴァル卿(悪役その1)は韓国の俳優がやっているのだが、それは全く気にならなかった。
(韓国といえばH6のソニンもよかったな)

アフタートークでも時間オーバーするほど熱く語っていたので、話好きの人のようだ。
(要するに日本語はかなりうまい)

パーシヴァル卿はギャンブル好きで破産した貴族なのだが、破産貴族は18世紀のフィクションにも大勢出てくる。

貴族の一つのステレオタイプなんじゃないかと思いたくなるぐらいだ。

思いつく限りだと、FieldingのThe Modern Husband、BurneyのCecilia、SheridanのThe School for Scandal、AustenのSense and Sensibility、あとギャンブルでイカサマするシーンが出てくる戯曲もあった。

Wildeの『まじめが肝心』も改変版だと借金取りが来るシーンが追加されていたっけ。


ローラはDV夫と離縁できなくて大変な目に遭うわけだが、うろ覚えだけど19世紀の結婚法改定では夫の不倫を理由に離婚できるようにはなったが、DVでは離婚できなかった気がする(そもそも当時はDVという概念がない)。

結婚式の曲が不協和音で不気味なのだが、結婚式が不吉なのと、夫が妻に暴力を振るうのは「あわれ彼女は娼婦」を思い出した。
(あっちの夫は妻がどこかの馬の骨(実際は実兄)の赤ん坊を宿していて、そのカモフラージュの為自分と結婚したと知って激怒しているので、まだ怒る理由がマシなのだが)


フォスコ伯爵(悪役その2)はパーシヴァル卿と悪巧みをするイタリア人なのだが、陽気な性格のせいか悪役なのに憎めないところがある。

パーシヴァル卿がキレてDVに走る役どころなので、フォスコがいないと舞台が相当暗くなってしまう。

フォスコをやった人(岡幸次郎)が男性陣の中では一番うまかったように思う。

アフタートークによると20年ぐらい役者をやっているそうだが、ローラの叔父フェアリー氏を演じた役者はなんとキャリア50年だそうだ。

髭をつけているとジョニー・デップのように見えた。

初登場シーンでは医者のせいか白いタキシードだが、後半はキラキラの赤いジャケットを着ていて、とにかく目だつ。

秘密を探りにきたマリアンを逃がすのは、なんだかんだいってマリアンのことが好きだからじゃないかと思う。


ブログ検索で見た前評判だと「最初のウォルターに似た男の伏線が回収されていない」というのがあったが、それは作者の声(予言)みたいなものだと考えて特に気にしなかった。

    

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