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十二夜

Studio Life 「十二夜」 @シアターサンモール

CoRich

Studio Lifeは男優だけの劇団であり、イケメンを売りにしているのでジャニーズっぽいところがある。

男優だけということは、彩の国のオールメールのように女役を女装して演じる。


見に行く何日か前に、とある友人が「シェイクスピア劇観てみたいけど敷居が高い」と言っていたので、そういうことも考慮しながら観ていたのだが、これは間違いなく敷居が低い部類に入るだろう。

……”女性なら”という条件つきだけれども。

前述のようにジャニーズぽいので、観客がファンの女性(10代からマダムまで)ばかりであり、男性だったら非常に居心地が悪いのではないかと思う。


電話予約した際に「開演30分前、この日はプラットホームパフォーマンスがあるのでその30分前に引き取り」と言われたのだが、着いたのはパフォーマンスの10分前だった。

キャンセルされたかと心配になったが、何も言われなかったのでギリギリでも別に問題は無いようだ。

ちなみに、プラットホームパフォーマンスは劇団員のトークと歌だった。

劇場に関して注意すべき点がある。
隣に系列の「サンモールスタジオ」という小劇場があるので、お間違えの無いように。
(違う演劇をやっていたのですぐに違うと分かったが、一瞬びっくりした)


上演時間は3時間(休憩10分)。

今回はプラットホームパフォーマンスも見たため、実質4時間劇場に滞在していたことになる。

都心だからいいものの、22時終了は少しきつい。


「十二夜」を演劇として観るのはこれが初めてである。

NINAGAWA歌舞伎の「十二夜」なら見たが、あれは特殊だろうから比較対象にしづらい。

ビデオも観たが(ヘレナ・ボナム・カーターがオリヴィア、イモジェン・スタッブズがヴァイオラ)、諸事情により飛ばしながら観たのであまり良く覚えていない。


今回の満足度はあまり高くない。

話自体は面白いはずなのだけれども、観ていて何か満たされない気分になった。

一つ考えられるのは、役者(特に主役級)があまり上手くなかったのではないか、ということだ。

前に「話が面白いのになんとなく楽しくなれない」という気分になったのは「ハムレット温泉」だったが、そのときの連れに原因を聞いたら演技に問題があった、と言われたっけ。

私は所作のことはさっぱり分からないのだが、少なくとも台詞が早口でそんなにはっきり喋っていないので、聞き取りづらかった。

近くの席の人が休憩中に「台詞が聞き取れない」と言っていたので、そう感じたのは私だけではないようだ。

マライアやフェービアンは比較的年齢がいった人が演じていたので、主役は若さと美貌(?)を売りにし、ベテランが脇を固めるという構図なのかもしれない。


舞台の大道具は白いキューブ(1辺が30cm、とはっきり言及されていた)がいくつも積み重なっている。

舞台中央奥に衝立状のブロック壁が2枚あって、これにはキューブを抜いた穴がいくつもあるので、例えばマルヴォーリオが手紙を読んでいるときにトービー達が穴から顔を出して覗く、といった使い方ができる。


マライアは完全にトビー側なのかと思っていたが、冒頭でトビーを叱るシーンだと、トビーとオリヴィアの間で板ばさみになって困っているようにも見えた。


マルヴォーリオはキャストの都合か意外に若かった。

映画版だと初老だったように思ったのだが、今回は20代後半~30代前半(「メイちゃんの執事」に出てきそうなイメージ)。

マルヴォーリオが笑いものにされることについて、ひょっとしたら年齢は意外と重要なのかもしれない。

現代の目から見るとマルヴォーリオがあんなにいじめられるのは可哀そうに思える、という話を聞いたことがあるが、もしマルヴォーリオが初老だった場合、ファブリオによくある「若い妻をもらった(もらいたがる)初老の男」という、典型的な笑いもの(あるいは若い男に妻を寝取られる夫)の型に当てはまるのではないかと思う。

また、当時の階級感も気になる。

執事とお嬢様が結婚するのがありえないことであったなら、マルヴォーリオは大それた野望を持っていることになり、罰せられて当然ということにもなる。

身分違いとの結婚というと、「十二夜」のトビーとマライア、「終わりよければすべてよし」のバートラムとヘレナ、「オセロー」のオセローとデスデモーナ。
(ジェシカとロレンゾーは身分違いの恋に入るのだろうか?)

マライアに関しては、「ヴェニスの商人」でポーシャの侍女ネリッサとバッサーニオの友人グラシアーノが結婚しているので、侍女の身分がどれぐらい低いのかはっきりしない。(グラシアーノはバッサーニオより身分は低いようだけれど…?)

後期のロマンス劇「ペリクリーズ」「テンペスト」「冬物語」では、身分の高い男性が素性不明の少女と結婚しようとして、実は王侯貴族だと分かる、というパターンが多い。

もっと単純化して、貴族とその周辺VS民衆(「夏の夜の夢」の職人たち、「恋の骨折り損」のコスタードとジャケネッタ、「冬物語」の売春宿のおかみなど)とした方がいいのだろうか?


演出としては、人生の悲哀を感じさせる演出が挟み込まれていた。

特にフェステ(年齢のいったベテランそうな俳優であり、左手がないという設定だった)が、冒頭やラスト、マルヴォーリオに罵倒される場面などで悲しそうに微笑むのが印象的である。

シェイクスピアの作品は年代を追うごとに円熟味が増すといわれているが、今回の演劇を観て「十二夜」は初期の明るい喜劇から後期のロマンス劇への過渡期にあると感じた。

トビーたちが言葉遊びをして楽しむシーン、マルヴォーリオを散々からかうシーンは「間違いの喜劇」等の元気のよさを感じさせるが、一方で全体的にロマンス劇の雰囲気も漂っている。

もっと若い頃は、アントーニオやマルヴォーリオ、エイギューチクなどひっそりと表舞台から去っていく人物が描かれるのか(アントーニオとマルヴォーリオに関しては泣きながら走り去っていく)、どうして全員ハッピーエンドにならないのか納得がいかなかったが、今観るとこういう状況こそが実際の人生なのではないかと思う。


アントーニオに関しては、はっきりとホモセクシャル(セバスチャンが好き)とわかるシーンが描かれていた。

彼がセバスチャンへの熱い思いを語るときは滑稽な恋愛シーン(横恋慕など?)に使われるような曲が流れていたし、やたらとセバスチャンにくっついたり唇を奪おうとする所作も見られた。

Studio Lifeは男性同士の恋愛(BL?)も演じる劇団だが、今回に限っては同性愛は笑いの対象のようだ。

アントーニオと言えば、「ヴェニスの商人」でも尽くして捨てられる役なので関係があるのかと疑いたくなるが、「テンペスト」では性悪な弟の名前なので、単にイタリア風の名前のストックが少なくてかぶっただけかもしれない。

サー・アンドルー・エイギューチクは細身の少年だった。

原作を読んだりNINAGAWA歌舞伎を見たイメージだとちょっと頭の悪い男性のように思っていたが(残念ながらビデオ版エイギューチクは全く記憶にない)、今回だと単に幼いためトビーにいいように利用されているように思えた。

シザーリオへの決闘状は大きな巻物に大きな字で書かれていて、舞台から10列以上離れている私の席からも文字が読めたのだが、携帯用絵文字のような絵が書かれていたり、「どちらかを天国に送りますYO!」となっていたり、かなり子供っぽくて笑ってしまった。

ここまで若いと、財産収入も多いようだし、また「ヴェニスの商人」のように結婚制限があるわけでもないので、これからまだまだやり直せると感じた。

なお、髪型は狼少年のようなもさもさ頭(喩えるなら、歌舞伎の白いカツラを金髪にしたものか、映画「ラビリンス 魔王の迷宮」のDavid Bowie)であり、おそらくトビーの「お前の頭ももっとマシになっただろう」の台詞によるものだろうが、その台詞自体はなかったと思う。


原作を読んだ限りだと、ヴァイオラがなぜ男装してオーシーノー公爵に仕えたがるのかよく分からないのだが、今回ははっきりとした理由付けがなされていた。

ヴァイオラと船長が話していると、いきなりオーシーノーが出てきて切ない胸のうちをロックに乗せて歌い、その姿にヴァイオラが一目ぼれしてしまう、というやや強引な展開。

原作でもそうだったかもしれないが、今回は特に一目ぼれが強調されているようで、オリヴィアはかっこいい男(シザーリオ)が来たと聞いて嬉しがるし、セバスチャンもオリヴィアが迫ってきて「美しい人」と喜んでいる。

美貌と言えば、セバスチャンがアントーニオに「妹は私そっくりだった」と言ったらアントーニオはなぜか喜んでいた。


今回は「音楽劇」と銘打たれているので歌が多いのだが、聞いたことのあるメロディが多かったので、オリジナルではなく替え歌のようだ。

音楽はどのジャンルも疎いので、曲名が分かったのはマルヴォーリオが手紙を読んで大喜びで歌う第九だけだったが。

コーラス隊(オーシーノーに冒頭で音楽を奏でる演奏隊というわけではなく、主要人物が歌うときのバックコーラス)が鳩としてずっと舞台上におり、鳩の所作まで行なっているのは非常に謎なのだが、ファンクラブがあるということを考えると、なるべく多くの構成員を舞台上に配置して彼らのファンを満足させたいからなのかもしれない。
なお、コーラス隊は場面転(ブロック壁の配置換え)換も担っていた。


トビーやフェステが言葉遊びをする場面は、格言を言い合うような演出だったようだが、あまり面白くなかった。

いっそ、全く別のゲームにして、もっと分かりやすく笑いを取ったほうがいいのかもしれない。


  

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