2部だけはTSCの「
王妃マーガレット」を見ているので、2回目である。
原作を2~3回読んで観るとようやく人物関係を大まかに把握できた。
ヨーク公がどうして「グロスター公に死んでもらいたい理由があるのだ」と言うのか、やっとわかった。
舞台装置は3部共通だが、今日は池の上に2本橋(板)がかかっていた。
シンプルながら、池の装置なんかは金がかかっているのかもしれない。
今日は昨日よりも池を使うシーンが多く、サフォークが海賊に突き落とされたり、ジョン・ケアードの台詞にある「あの噴水」の代わりになったりした。
また、右手前にあるやぐらは終盤では横倒し(2階部分を観客側に向けて)になっていて、サマセットが死ぬ宿屋の建物を表していたようだ。
台詞は完全に小田島訳そのものというわけではないようで、ケアードの台詞の単位が日本式(円や升)になっていたりした。
アイデンは田舎者ということを演出するためか、なぜか土佐弁で喋っていた。
(アイデンの独り言の部分はカットされていたし、王の前では共通語ぽい喋りをしていたので、方言で話す部分は短いのだが)
ヘンリー六世は様々な事件を通して自立というか成長してゆくような印象を受けた。
柔和な性格は変わらず、結局はヨーク公ら周囲の人間につけこまれてしまうのだが、サフォークを流刑にするあたりはグロスター公を陥れられて泣いていた頃よりは自立している感じを受けた。
演出は分かりやすさに留意しているようだ。
赤薔薇と白薔薇が戦う場面では、まず赤薔薇と白薔薇を象徴する紅白の布を1枚ずつ垂らしておき、戦闘中は兵士がその巨大な布を振り回して混戦の様子を表していた。
最後に白薔薇が勝つと、兵士が白布を再び舞台に吊るす。
第一部の英仏戦争の際も赤と青で英仏を表していて、ころころ勝利者が変わるのが見てとれて楽しめた。
2H6には生首や死体が何回も出てくるので、どうするのかと気になっていたのだが、汚れた大理石の彫像みたいな物体であった。
蜷川のタイタスのようなマネキンではなく、当人に似せて作られている。
グロスター公の死体は本人ではなく、そっくりの人形であり、顔もちゃんと赤黒くなっていた。
生首自体には血はついておらず、布に包まれている場合は布に血がついていた。
なお、今回は血糊の使用が一度だけあり、リチャード(ヨーク公の息子の方)がサマセットの首を切るところだった。
リチャードの顔に血糊がもろにかかっていたが、リチャードだけ血をかぶるのは何か意図があったのだろうか。
マーガレットがサフォークの生首を抱えるシーンでは、周りの兵士が不気味がっており、「サロメ」のイメージもあるのかもしれない。
マーガレットは「王妃マーガレット」と比べると、冷酷そうな印象を受けた。
(役者の感じにもよるのだろうが)
このマーガレットはエリナーが引き回しされているところを見ても心を動かしそうにない。
出兵する女性というと『
リア王』のコーディリアがあるが、彼女との共通点が何かありそうな気もする。
エリナーが夫グロスターを説得する箇所は『
マクベス』を、マーガレットがサフォークとの別れを惜しむシーンでは『
ロミオとジュリエット』の初夜後のシーンを思い起こさせた。
昨日は衣装に関して書き忘れたが、鎧はトレンチコートである。
(剣をさせるよう、腰の辺りからスリットが入っている)
鎧を着ているのはハンフリー兄弟のみだが、これはケードに「金ぴか鎧」と言われるからだろう。
エドワードとリチャードJr.だけは黒いロングコートで、ジョージは他の貴族と同じカーキ色だったが、これはおそらく3部でジョージがウォリック方に付くことの伏線だろう。
ケードが登場するシーンは5色のスポットライトを使ったり、愉快な音楽をかけたりして、愉快な雰囲気を出そうとしていたが、書記やセイ卿を情け容赦なく殺していく様は逆に恐怖を与えた。
グロスター公は2部だけ見るとかわいそうな役回りにも見えてしまうのだが、この作品には不運な人はいても絶対的な善や悪は存在せず、権謀術数の不安を感じさせるところがある。
「ヴェニスの商人」で不当な裁判を取り上げた
上演があったが、裁判の不当性に関してはグロスター公の方がシャイロックよりひどいのかもしれない。
「王妃マーガレット」では省略されていた呪術のシーンでは、マージャリー・ジャーデーン(余談だがジャンヌを演じたソニンが扮しているので、彼女は2回とも火刑に処される役である)は白ずくめの衣裳、ボリングブルックもドルイド僧を思わせるような服装で、マージャリーは巫女というかイタコ(拠り代)のようだ。
エリナーは引き回し時に何やら描かれた紙の帽子をかぶっていたか、何語かは分からなかった。(ラテン語かもしれない。)
この場面でグロスター公が「あと2~3日の辛抱だ」と言っているのにすぐマン島へ連れて行く騎士が出てくるのは矛盾しているような気がするが、そういう細かい矛盾は気にしてはいけないのだろう。
他の矛盾点としては、1H6においてヘンリー六世がトールボットに「私がもっと幼いときに父からあなたの武勲を聞かされていた」と言うが、ヘンリー六世は生後9ヶ月で即位、つまりその前に父親は死んでいるわけで、赤ん坊のときに聞かされた話を覚えているというのは無理がある。
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