忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

夏の夜の夢

夏の夜の夢 @アトリエだるま座

CoRich

今日はチケプレで当たった「夏の夜の夢」を観てきた。

劇場の話から書くと、道に迷ったので30分近くかかった。

荻窪の南口徒歩10分なのだが、例のごとくてきとうに歩いていったら
豪邸がたくさんあるところに出てしまい、暗いし寒いし道は
分からないしで途方に暮れた。

とりあえず明かりの見えるところに行ったら運動センターとかいう
ランドマークにたどり着き、なんとか道がわかったけど。

地図がなかったら完全にアウトだったな。

帰りはちゃんと劇団の人に道を訊いたところ、なんとか通り商店街
を抜ければすぐだということがわかった。


客層が老若男女いて(ただし子供はいなかった)、どんな劇団
なのだろうと疑問に思った。

小演劇系というと役者も観客も若者ばかりの編成が多いが、ここは
そうではないようで、サポーターズもいるようなので、
区民コミュニティに近いものがあるのだろうか。

地域に密着して、駅前(商店街の入り口)に「だるまシアターは
コチラ」というかわいい看板を立ててくれればいいのに、と迷子に
なった身としては思った。


今回のMNDを一言で言うなら、コンパクトにまとまっていた。

CoRichに「上品な笑い」という感想を書いている人がいたけれど、
まさにその通りだと感じた。
すごく突出したものではないというか、問題提起をするとか、
アバンギャルドといったものはないのだけれど、ちゃんと
ディテールにも凝ってしっかり作っていたと思う。

安定しているというか、安心して観られるというか。

これは劇団の雰囲気もあるのだろう。

あくまで私見だが、パック、オーベロン、ボトム、ティターニア
といったベテランがしっかり屋台骨を支えているからではなかろうか。

アセンズの若者達は現代の若者っぽい喋り方(現代劇の舞台では
こういう風に喋るだろう、という意味)をしていたが、
それがわざとなのかどうかは分からない。

私はアバンギャルド系よりもこういう落ち着いた感じの方が好きだ。


この演劇について別の言い方をすれば、子供から大人まで楽しめる
G (general) 指定といったところか。

(正直なところを言えば、パックがNHK教育のハッチポッチ
ステーションの主役を務めたグッチさんに見えてしまい、
ぬいぐるみまで持っていたこともあり、どうもNHK教育のイメージが
抜けなかった)

シュール・アングラ・ブラックといった要素はほぼ皆無で、ボトムと
ティターニアのセックスも全く匂わせない。

ティターニアに魔法がかかったところは大変分かりやすかった。
かわいかった。

雰囲気としては子どもシェイクスピアシェイクスピア・シアター
が近いだろうか。

上品さというか優等生っぽさという面ではキャラメルボックスの
僕の大好きなペリクリーズ」にも少し雰囲気が近い。

喜劇を見たからそう感じるのかもしれないが、この劇団は重々しい
史劇や悲劇よりも、中期以降のややしっとりとした喜劇をやると
似合いそうだ。

「お気に召すまま」なんてどうだろう。

劇団の雰囲気と芝居の雰囲気がよく調和していたように思う。

台詞を改変したり、ツッコミを入れたりして独自色を出していたようだ。


衣装は白系統で統一されていた。

冬だからだろうか。

ヘレナやハーミアと妖精の衣装が似たデザインだったので、
何か意味があるのかと最初はいぶかしんだが、深い意味はなかった
ように思う。

ライサンダーとディミートリアスの見分けがつかなかったが、
あれはどっちがどっちでもあまり変わらないのか(ジラールの
羨望の炎―シェイクスピアと欲望の劇場』にそんなことが書いて
あった気がする)、または服が似ていたほうがパックの取り違えに
説得力が持たせられるのか。

蛾の羽、豆の花、蜘蛛の糸、芥子の種の衣装がそれぞれ特徴を出した
デザインなのは嬉しい。

ボトムが「豆を食いたい」と言ったときに豆の花がおびえるのも
芸が細かくて良かった。

重箱の隅を突っつく細かさで一つ惜しかった点としては、芥子の種が
明らかに女性役なのにボトムが「ムッシュ・芥子の種」と呼んでいた
ことだろうか。

原作どおりだと確かにそうなのだが、細部に拘るなら「マダム・
芥子の種」にしてもよかったかと思う。

ムッシュのままでもボトムの誤用という解釈(ムッシュを男女に
使える「~さん」のように捉えている、など)は可能だけれど。

あと、ボトムに魔法をかけたところがちょっと分かりにくかった
ので、「ロバに変身させた」という台詞があったほうが良かったのでは。


パックが「トテトテと歩く」と公演案内に書いてあったので小柄な
少年/少女を想像していたが、どちらかというと「ドテドテと歩く」
がっしりした男性が現れたのには少し驚いた。

イメージ的に「トテトテ歩く」感じは確かにしたが。

登場時に頭に乗せていたカエルの名前がウィリアムであることに
一人で受けてしまった。


シーシアスが武力で無理やり迫ったという背景があるためか、
ヒポリタがそれほどシーシアスとの結婚を喜んでいないような演出が
されることがあるが、今回はそんなことはなく、登場してすぐに
アツアツぶりを見せ付けていた。

4幕でヒポリタが4人の話を聞いて魔法のようだと言い、シーシアスが
それを否定する場面も、あまり冷たそうには感じなかった。

ライサンダーが魔法にかけられて去り、ハーミアが一人おびえる
場面では、最後に獣の唸り声が聞こえて恐怖感を増しているのだが、
これが職人の芝居のライオンの練習なのは面白い演出だと思った。

これは「ライオンの唸り声でご婦人方が怖がってしまったら
どうしよう」いう職人の懸念に対し、いい効果をもたらしている
と感じた。


タイターニアとオーベロンが口論する場面では、タイターニアの
長い台詞(季節がどうのこうの)を周りの妖精たちが分担して
喋っていた。

長台詞を飽きさせないための工夫だろうか?

舞台上にたくさん人がいると華やかでいいなあと思ったが、
もしかすると妖精をたくさん出すのは女性の配役が少なく、もし
劇団の男女の割合が同じくらいだと女性役者がたくさん余って
しまうからなのかもしれない。

AUNの「アントニーとクレオパトラ」でもクレオパトラの侍女が
たくさんいて、やっぱりそういう意図かなと思ったのを思い出した。

パックがカップル2組を誘導するときにも、パックの影(パックと
同じ服装をしたほかの役者たち、「影」という用語は宝塚歌劇団で
使われていたと思う)が5人ぐらい出てきていた。

あの場面で妖精が4人をいじるというのはRSC版あたりで見た気が
するが(そのときはパックではなく個別の妖精として)、MNDは
20回くらい見ているのでどれだったかはっきりしない。


4幕でアセンズの恋人たちが結ばれるとき、イジーアスが無念そうな
顔をしていたが、そこで『ヴェニスの商人』のアントーニオーを
思い出した。

アントーニオーとバッサーニオーのように、イジーアスは
ディミトリーアスが好きだったという可能性を読み込むことは
可能なのだろうか。

そうなると冒頭の「ディミトリーアス、お前は親父さんと結婚
しろよ」にちょっと違った響きが出てくるわけだが……。

イジーアスは5幕では微笑を浮かべていたので、あきらめて娘の
結婚を祝福することにしたようだった。


5幕といえば、3組のカップルがそれぞれ離れて座ることが多いよう
に思うが、今回はディミ・ヘレナ・ハーミア・ライというように
少女二人がくっついて座っており、楽しそうに肩を寄せ合っている
ことから、二人の友情が復活したことを思わせてちょっと嬉しかった。


バレエ版だと職人の芝居の途中で帰ってしまうという(職人に
対して)ひどい演出だったが、今回はかなり乗り気で鑑賞していた
ようだ。

最後のダンスでは喜んで手拍子をしていて、なかなか盛り上がっていた。

ダンス中にかくし芸があって面白かったっけ。

ライオンの唸り声は派手にグルルルとやって、女性陣はちょっと
怖がっていたようだった。

職人芝居の演出としては、出番のない職人が歌ってBGMにするという
のが素人芝居っぽくてよかった。

よく聞いたらドナドナだったので笑ってしまったが、学園祭の演劇
(語劇)とかだったらそういう選曲をしそうだなあ、と妙に感心も
した。

拍手[2回]

PR

この記事にコメントする

Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass
Pictgram
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

ご来場ありがとうございました

だるま企画制作のスズキマキコと申します。
初めてコメントさせていただきます。

突然の訪問、申し訳ありません。
そして、遅くの訪問もうしわけありませんでした。

この度は「夏の夜の夢」ご来場ありがとうございました。
細かいところも、全体像も本当によく観ていただき、ありがとうございました。

ブログを拝見しながら、驚いてしまいました!
まさしく「図星だ!」と、いうところもあり、「なるほど…。そう観ていただけたか…。」と思うところもあって、楽しく拝見いたしました。

本当にありがとうございました。

最後に駅前の看板は考慮していきたい課題と思います。

今後もだるま企画・劇団だるま座をどうぞよろしくお願いいたします。
(「お気に召すまま」は3年前に1度行いました。また公演したいです。その際はぜひ、足をお運びください。)

この記事へのトラックバック

トラックバックURL

Calender

02 2024/03 04
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

Search

東京近郊シェイクスピア劇スケジュールTwitter

Twitter ブログパーツ

Ninja AD

アクセス解析

カウンター