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冬物語

彩の国さいたまシェイクスピアシリーズ「冬物語」

CoRich

上演時間は18:30~22:00の3時間半(休憩15分含む)。

3時間かと油断していたら思ったより長丁場だった。

終電は大丈夫なのだろうか。


プログラム読んだらニナガワが「『冬物語』読んだけど面白くなかった」と書いていてちょっとびっくりしたが、確かに最初に読んだとき(小田島版)はそんなに心惹かれず、5段階評価で3とした記憶がある。

「面白そう」と思い始めたのは、去年ジラール『羨望の炎―シェイクスピアと欲望の劇場』を読んでからだ。


8割程度スタンディングオベーションしていたが、そんなに良かったかなぁ……。

個人的にはりゅーとぴあのが印象に残った。(先に見たのと、正面から見たというのが大きいが)


唐沢寿明(レオンティーズ)が主役扱いだが、出番の多さを考えるとむしろ田中裕子(ハーマイオニー/パーディタ)のが主役と呼ばれるのにふさわしいのではないか。


唐沢は相変わらず声が小さい(他の人より通らない)気がしたが、ひょっとしたら声質のせいもあるかもしれないな。

むしろポリクシニーズのが堂々としていた。

物語の真ん中(ボヘミアの場面)では全く登場しないので、いまいち印象が薄かった。


パーディタは正直なところ老けすぎだと感じた。

少女のような声を出してはいるが、無理しているせいかやや棒読み気味になってしまっていた。

ハーマイオニーはなかなか良かったと思うので、パーディタを歳相応の少女にやらせた方がよかったのでは。(蒼井優なら母娘で通りそうな気が)

ハーマイオニーの方はというと、落ち着いていてとても不倫などしないように見えた。

ハーマイオニーをいかにも貞淑な女性にするか、性的放縦さを感じさせるような健康的色気ある女性にするかは、意見が分かれそうだ。

レオンティーズの狂気を際立たせないのならば前者だろう。

一方、これはりゅーとぴあ版にも書いた気がするが、『シェイクスピアを読み直す』という本に、「ハーマイオニーは性的魅力溢れる女性だったが彼女の性のパワーはどんどん押し込められ、しまいには石像にされてしまった」と述べた論文があったので、若さと魅力溢れる女性がやるのもありだろう。

りゅーとぴあ版は後者だった(但しパーディタとは別の人)。


性的放縦さを考えると、やっぱり『オセロー』のデスデモーナが浮かぶが、ある程度身分の高いお付きの女性がいるところまで同じである。


お付きの女性と言えば、ポーライナは良かった。

一番印象に残った。

最初は『ロミオとジュリエット』の乳母や、ウィンザーの陽気な女房たちのような口うるさくて世話好きのおばちゃんを想像していたが、何か違和感を覚えた。

悪い意味ではなく、品があると思ったのだ。
プログラムを見たら「身分のある女性なのだから上品に演じるよう心がけています」とあって、納得した。

確かに、ポーライナは重臣アンティゴナスの妻なので、貴族と考えても差し支えないわけだ。

余談だが、『オセロー』のエミリアも下女ではなく武人の妻だ、ということは松岡和子『すべての季節のシェイクスピア』で指摘されていた……気がする。

もう1つポーライナで思ったのは、15年も王を王妃殺しで責めるなんて、王がちょっと気の毒ということだ。

しかもポーライナは王妃を生かした張本人であるわけで、澄ました顔をして嘘を突き通している。

あれだけ改心していれば15年も待たせなくてもいいとも感じられるが、アポロの予言(娘との再会)が成就しないと駄目ということだろう。

そう考えると、ポーライナはアポロとの繋がりがあるとも考えられるだろう。

ギリシャ神話風に考えれば、アポロの熱心な信者であるポーライナにアポロが目をかけていて、ハーマイオニー隠匿にアポロも協力した(アポロがわざとハーマイオニーを仮死状態にした、ポーライナに霊感を与えてデストリックを示唆した etc.)。

もちろん、もっと現代風に、ポーライナが機転のきく女性と考えた方がキャラクターとしての魅力は出るが。


最終場でレオンティーズがポーライナをカミローにめとらせようとしたとき、カミローとポーライナは困ったような笑いを浮かべていた。

確かにポーライナは「王女様が見つかるのは私の夫が見つかるのと同じくらいありえない」と言っているが、それを受けて「お前に夫を見つけてやろう」と夫の訃報を受けたばかりの女性に言うのは少し身勝手な気がする。

勝手な結婚と言えば、『尺には尺を』の大公も空気が読めない男で、敢えてイザベラに冷たく当たったり、最終場でいきなりイザベラと結婚すると言い出している(もちろん彼女の事前承諾がない上、彼女は返事すらしない)。

当時の女性は結婚しないと金銭的にも社会的にもやっていけなかったのかもしれないが、アンティゴナス不在の間ポーライナはどうやって生計を立てていたのだろう?

レオンティーズが申し訳なく思って生活費くらい賄ってくれそうだけど。


フロリゼルもイメージ通りだった。

彼は「から騒ぎ」ではクローディオを演じていたが、爽やかな二枚目を軽やかに演じるのが似合っていた。

プログラムには舞台稽古の様子が載っていて、羊飼い姿のときはむさくるしい顎髭をつけていたのだが、どうやら本番までに変更になったようだ。

本番では髭の一切ない、質素な服をまとった青年として現れていた。


最初の場面ではなぜかマミリアスが魚だった。

小さいから子どもだとすぐ見当はつくのだけど。


コリオレイナス」の時にも聞いた批判だが、民衆が醜く描かれている。

鼻の穴を大きく塗ったり、青鼻をたらしたり。

確かに当時の民衆は貴族からみたら汚く品のない存在であったということはシェイクスピアの作品の節々で示唆されていることだが、果たして王候貴族と民衆は顔かたちまでそんなに違うのかと考えると、疑問符を浮かべたくなる。

パーディタとフロリゼルは明らかに浮いていた。


民衆といえば、羊飼いの息子は歳を取っていないようだった。

逆に王様チームはみんな白髪になっていたが、マミリアスがまだ小さいことを考えると30歳前、15を足しても45なので、少し老けすぎだと思った。

ハーマイオニーとレオンティーズは苦労により老化が進んだとしても、ポリクシニーズはその理由はないだろう。

なおポーライナだけは白髪は少なかった(染めているのか?)。


オートリカスはりゅーとぴあ版では出ていないか存在感がないか、とにかく記憶にないことは確かだが、彩の国版では強大なインパクトを残した。

時間もかなり長く取っていたと思う。

歌の箇所はマイクのせいか歌詞がさっぱり聞き取れなかったのは残念。

ちなみに、演じたのは「エレンディラ」の祖母を怪演した嵯川哲朗だった。

“フォルスタッフを詰め物なしで演じられる”(『ジョゼフ・アンドリュース』)ような立派な体躯だった。


大川浩樹(坊主頭の人)は「リチャード三世」のケイツビー、「タイタス・アンドロニカス」のタモーラの息子など、どうも悪の手下のイメージが強く、デルフィ帰りの使者として登場したときもむしろ暗殺して首でも持ち帰ったように見えたのだが(笑)、ふと考えると『冬物語』には積極的な悪役(例えば『から騒ぎ』のドン・ジョンのような)がいない。

ポリクシニーズが悪者といえば悪者なのだが、そうは描かれていない。

『オセロー』のイアーゴなどは“理由なき悪意”と言われているけれど、『冬物語』は悪意すらないような気がする。


神託と言えば、中に入っていた紙にはちゃんと神託通りの文句が書いてあった。


最初の方でレオンティーズが「私がどんなに頼んでも駄目だったのに」と言うところでなぜか笑いが起こっていた。

アンティフォラスが熊に取って食われるのはト書きにあった気がするが、全く(叫び声さえ)なかった。


最終場の冒頭に、観客をうまく使った演出があったが(読んだときはそんな可能性に全く気付かなかった!)、「コリオレイナス」同様1階席のお客様専用である。


最終場、最初はパーディタが田中裕子なのだが、いつの間にかハーマイオニーになっていて驚いた。

おそらく、ポーライナの掛け声でカーテンが揺れ動いたときだろう。

確かパーディタの姿は見えなかった。


「絵の具が乾いてないから触るな」云々はよく観客に受けていた。

ハーマイオニーが動き出したとき、王以下全員が驚きざわめくのにはちょっと笑ってしまったが(見るからに像てはなく人間なので)、考えてみたら彼らは本当に像が動いたと思っているわけであり、驚くのも無理はない。

像が動くというとピュグマリオン(マイ・フェア・レディの原作ではなくギリシャ神話の方)が有名だが、それを考えると「腕のいい彫刻師がそっくりに彫り上げた」もあながち無理ではないのかもしれない。

ちなみに、ピュグマリオン神話を元にした「マネキン」という映画もあるらしい。

舞台は現代のアメリカで、若い男性がマネキンに一目惚れしてしまうが、それは古代に呪いを受けて人形にされた美女だった、という話だったと思う。


最後に、「冬物語」というタイトルだが、これはマミリアス王子が母親に言う台詞「冬にするお話は怖いやつがいい」から取られているので、『冬の夜ばなし』の方がニュアンスは近いのかもしれない。

もしくは『冬の物語』とすると原題のWinter's Taleに近くなるか。

ジラールはマミリアス王子が語ろうとした話の内容を、これからレオンティーズが辿る物語だと推測していた。
冬の物語とは、レオンティーズが妻子を失った15年間の「冬」の物語だというように。

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