開演18:30、終演21:30で約3時間の公演だ。
夜公演だと、「コリオレイナス」を見たときに、帰りに人身事故があって真冬の夜中にホームで1時間以上待たされ、とても寒くて風邪を引いて寝込んだことを思い出す。
今回は(も?)大丈夫だったけど。
彩の国はいつもLC席、つまり横っちょの席。
正面席が舞台を垂直(90度)に見るとしたら60度ぐらいか。
慣れないとうまく舞台に入り込めない。
彩の国で見たやつがなんとなく印象薄いのはこのためだろう。
「
コリオレイナス」なんて、正面から見た人は「自分が映ってる」ことで色々考えさせられるのだろうが、横の人には関係ない。
その代り、舞台にはかなり近い上、上から見下ろしているので、普段は見えない裏側まで見えるのは面白い。
「
恋の骨折り損」ではビローン(高橋洋)がサインするシーンで「あ!」とでっかく書いてるのが見えた。
では、「から騒ぎ」の感想を。
月川悠貴は相変わらず美しい。
オールメールの中では特に美しさが光り輝いている。
隣の女役(ベアトリス等)が女に見えなくなる欠点はあるが……。
今回は髪形がオードリー・ヘップバーン風のショートカットだったせいか、思ったより大人の女だった。
原作を読んだときは、ヒアローは人形のような女だと思っていたが、彼の演じ方によってより人間に近くなっていたと思う。
終盤のひっぱたく演出は彼の作り出したキャラクターに合っていて良かった。
主演の小出恵介は思ったより色が黒かった。
個人的にはクローディオのがかっこよかった気が……。
ベネディクトは20代のイメージがあったので、10代の少年ぽい彼が演じると初めは違和感があった。
オールバックのイメージがあったのにボサボサ頭とか。
でも、恋に目覚めた後の情熱的な所作を見ると、ベネディクトもなんだかんだいって若者なんだな。
主役を張るにはちょっと物足りなかった気も。
ベネディクトは『恋の骨折り損』のビローンに似たところがあると感じた。
ベアトリスは「
お気に召すまま」のロザリンドと似た感じの外見。
特に特筆すべきことはないかな。
見られないほどひどくはなかったと思う。
ベアトリスとベネディクトの関係が発展したものが『
高慢と偏見』のエリザベスとダーシーじゃないかな、と思った。
エリザベスは恋ではなく感謝によりダーシーと結ばれると分析している人もいるから、ちょっと違うといえば違うけど。
クローディオはイケメンながら少々薄っぺらいところを感じさせ、イメージにぴったりだった。
ドン・ペドロはどこかバイセクシャルさを感じさせた。
彼は中年の男の色気を持つが、心はどこか少年のままである。
感謝の気持として男性の唇にキスをするのは、グレゴリー・ドーラン演出の「
ヴェニスの商人」でもあったが、バッサーニオとアントーニオは同性愛関係があるらしいので、ドン・ペドロのキスもやっぱりバイセクシャル的なのかもしれない。
そう考えると最後まで未婚なのも意味深なのかもしれない。
夜警のシーンは蜷川らしい演出だが……私は好きじゃない。
男の裸は好きではないからかもしれない。
井出らっきょが出ていることに受ける人もいるようだが、残念ながらお笑いには詳しくない上、そのシーンではコンタクトがずれてしまい(5分ぐらいで直せたからそれほど支障はなかったが)、よく見えなかった。
ジラール『
羨望の炎』で「から騒ぎ」が大きく扱われていたので、「これジラールにあったなぁ」とニンマリすることが何度かあった。
ギリシャ風の彫像が20体以上林立する舞台装置は、ジラールが言うように、この戯曲では噂が強い力を持っていることを象徴しているのかもしれない。
彫像たちがいるために、たとえ独白であっても、登場人物たちが誰かの視線に絶えず晒されていることを感じさせた。
ジラールと言えば、主演の小出恵介はプログラムで「ベネディクトはあんなにベアトリスと言い争いをしてばかりいたのに、どうしてあんなにあっさり好きになってしまうか分からない」と言っていたが、ジラールによれば、あの2人は元々好きあっているが、好意を先に表した方が不利だからお互いに隠しているという分析だったと思う。
少女漫画等でも、いつもケンカばかりのアイツを気づけば好きになってしまったというのはよくあるパターンだし。
LC列では斜め下視線で普段は見えないものが見えるのを利用して、何が書かれているかいつも見るようにしている。
墓碑銘に捧げる板には詩が書いてあったようだ。原文通りかも。
取り調べのシーンで書記は何も書いていなかった。(ペンにインキがついてない、書く真似だけ)
それより左手で書いてたことのが気になった。
ラブレターには筆記体で何やら書いてあったが、役者の直筆だったら面白いな。
舞台を見て初めて気付くこととしては、思ってたよりも歌や踊りが多かった。
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