『
ウィンザーの陽気な女房たち』と『
ヘンリー四世』を合体させるとのことだが、なんとも感想が書きにくい。
いつもシェイクスピア劇を見ながら何を主軸に感想を書くか考えているのだが、どうも焦点が絞れなかった。
釈然としないのは、ちゃんと予習(『ウィンザー』だけで良かった)してかなかったのも一因だろう。
やっぱりあらすじを一言で言えるレベルではだめなんだな。
……いつも言ってるけど(笑)
ひとつ言えることは、『ウィンザー』そのものではなく、『ウィンザー』を下敷きにしたオリジナル作品を観に来たと考えた方がいいのだろう。
(例えば「
マクベスがいっぱい」のように?)
前回「
王妃マーガレット」が『
ヘンリー六世 第二部』にわりと忠実だったので、今回も『ウィンザー』を原作に近いかたちでやるのだと途中まで思っていたから、どうも釈然としなかったのだろう。
箱構造になっていて、19世紀の芝居小屋が「ウィンザー」を上演するというものだった。
袖に楽屋があって、着替えているのが見えたり、楽屋裏でハプニングがあったりするのは面白かった。
『ヘンリー四世』は最後だけちょこっと。
(ハル王子が王冠を持ち去る箇所だから第二部だろう)
『ウィンザー』は最初はしっかりやっていたが、ラストがうまく終わらないままで少し欲求不満が残った。
原作を知らないとよく分からないかも……?
芝居小屋を取り巻く謎も、謎は謎のままというか、謎であること(「分からない」)が答えというか、あれはあれでいいんだけど、ちょっとすっきりしない気も。
現実の世界は、シェイクスピアの喜劇のように都合よく「和解と再会」に至るわけではない、ということか。
エドガーが「羊みたいに従順」である謎は解決しないままだし、『ウィンザー』を上演し続ける謎も分かったような分からないような。
マーガレットが台詞をつぶやくひっかけは良かったと思う。
ラストで『
ペリクリーズ』のクリーオン夫妻に言及があっても良かったかも?
心情が逆だから駄目か?
舞台を19世紀にしたのは分かるし(確か女優が出るのは18世紀後半頃だったような……少なくともシェリダン(18世紀後半)には女優がいたはず)、新聞や
エドマンド・キーンといった当時のパーツも登場していたが、どうしてその時代にしたのか明確な理由は分からなかった。
箱構造の場合、箱の外側は現代(役者の日常)であることが多いから、「なぜ?」と思ってしまうのかもしれない。
まぁ、親の顔も知らなくて芝居一座に拾われたという生い立ちは現代日本じゃいくらなんでも無理か。
余談だがキーンの後の時代ならジャケネッタがやりたがった『
リア王』は正統派の方だろう。
『
へそ曲がりの大英帝国』という本で、19世紀ぐらいまで『リア王』はハッピーエンドに改作されたもの(Tyte版)が上演されていたと読んだ。
Tyte版も少しだけ読んでみたが、コーディリアがいきなりエドガーと結ばれるラストには笑ってしまったっけ。
登場人物の名前がシェイクスピアに因んでいるのにはニヤリとさせられる。
特にエリザベスとマーガレットは、「王妃マーガレット」で公爵夫人と王妃マーガレットをやった人だから、ライバル関係があるんだなと推測できた。
「ウィンザー」は副筋が足りないと思ったら、登場人物不足ということだった(こういうオチは最近だと「マクベスがいっぱい!」でも見たっけ)。
TSCは10人くらいいる劇団かと思っていたが、6人しか出てなくて驚いた。
パック→アン・ページの早変わりはよかったな。
全体的に笑いを取る演出が多かったが、喜劇だからいいと思う。
スレンダーではなくブルックをロシア人にしたというのは斬新だった。
ロシア人にしたのは『
恋の骨折り損 シェイクスピア全集 16 (ちくま文庫 し 10-16)』へのオマージュだろうか。
ロビンがいきなり『
マクベス』を引用したのには大いに笑ったが、周囲はあんまり笑ってなくて浮いた……。
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